ローメンに想う その1
テレビの全国放送でウソをつく
ローメンはこの世に登場してからまだ半世紀しかたっていない信州伊那の郷土料理である。
けっして上品な料理ではない。実に庶民的な料理である。今でこそ老若男女誰にでも愛されるローメンであるが、その昔は飲み屋の食べ物だった。
言い換えればラーメンは家族みんなで食堂で食べる外食の王様だったのに対し、ローメンは一杯飲みながら喰う男の食い物だったのだ。
故に味は濃くニンニクたっぷり、強烈な個性がローメンのウリだったのだ。
強烈な個性は今も変わらないが、時代を経るに従ってローメンは一般化してくる。私などは大学に入るまでローメンはラーメン同様に日本全国どこにでもあるモノだと思っていた。いや、伊那の大方の人間はみんなそう思って育ったはずだ。
それほどにローメンは伊那ではポピュラーなモノとなった。
平成6年のこと、私が商工観光課に在籍していたときのことだ。
フジテレビの番組で「クイズ年の差なんて」というバラエティがあった。司会は桂三枝さんと山田邦子さん。ヤングチームとアダルトチームに分かれてクイズを解き合う番組だった。人気番組だったから覚えている人も多いだろう。
すでに「ヤングチーム」というチーム名が時代を感じさせるわけだが、その中に「クイズ土地の差なんて」というコーナーがあった。それは日本全国各地独特の風俗から問題を出すモノだった。
ある日フジテレビから商工観光課へ電話があった。その電話を取ったのが私だった。その電話は「土地の差なんて〜長野編〜」でローメンの取材をしたいとのことだった。ついてはハガキにただ「ローメン」と書いてフジテレビまで送ってくれとのことだった。
担当ディレクターは、そのただ唯一「ローメン」と書かれた謎のハガキを基にローメンを探り、「いったいローメンとは何物か?」と出題するクイズのあらすじを考えているとのことだった。
打ち合わせどおり私は唯一「ローメン」と筆ペンで大書きしたハガキをフジテレビ宛に投函し、取材の当日を待った。
ロケハンはディレクター、カメラマン、音声さん、そしてタレントさんが箱バン一台でやって来た。私は当日、一日中ロケハンについて伊那を回った。地元の人に「ローメン好きですか?」と聞いて歩き、いくつかの店も取材して歩いた。
やって来たタレントは当時まったくの無名だった「極楽とんぼ」の二人だった。山本さんも加藤さんも一言で言って、ハッキリ言って暗かった。ギャグもホントーに寒かった。
もっとも私も「お二人と共演できたことを自慢できるようにこれからも頑張ってくださいね」なんて相当に寒いことを思わず言ってしまったから同罪か。
共演した。というのは問題を出題するときに
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加藤「ここ市役所の食堂にもナンかあるって聞いたんですけど」
牧田「はい、もちろんあります!」
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山本・加藤「そこで、クイズ土地の差なんて!」
山本「長野県伊那市でお馴染みの食べ物」
牧田・加藤「ローメン!」
山本「一体どんな食べ物でしょうか!」
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という掛け合いをしただけのことなのだが、けっこう面白かった。
もちろんそのビデオは私のライブラリーに収蔵してある。このページを作成するために久々に見て大笑いしてしまった。
写真はテレビ画像から。私の顔はそこから新種のウィルスが発生してはいけないので、自主規制しました。
「クイズ年の差なんて」での「一体どんな食べ物でしょうか!」に対する答えは「ひつじの肉をつかった蒸し麺」というものでしたが、スタジオでの正解者は皆無。
ただローメンなんて言ったってわかるわけがないのだった。無理もない話だ。
が、しかし、私にとって真の問題はそんなことではなかった。
なぜなら極楽とんぼの加藤さんが
「ここ市役所の食堂にもナンかあるって聞いたんですけど」
と言ったときに当然のように
「はい、もちろんあります!」
と胸を張って言ったその当時、その時はまだ市役所の食堂にはローメンはなかったのだった。
理由は特にない。「ただ、たまたま無かった」だけだ。その当時すでに「ローメンをメニューに入れろ」と言う職員の声はカナリ多かったのだ。が、いずれにせよウソをついたのはホントだった。
テレビ業界の用語でこういうことを「仕込み」と言うそうだ。けっして「やらせ」ではない。
「土地の差なんて〜長野編〜」放送の2ヶ月後、その「仕込まれた」伊那市役所食堂のローメンは晴れてデビューしたのだった。
人知れず私がホッと胸をなで下ろしたのは言うまでもない。
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