- ブーツフィッティング おまけの読み物 -

おまけのページです。スキーブーツに関するお話を気まぐれにUPしていきます。

その6 新しい道具のススメ

雪国に住んでいる方は当然として、ひとシーズンに何回もスキーやスノーボードに車で出かける方はスタッドレスタイヤを冬の間中履いている方も多いと思います。

そのような方はどれぐらいのサイクルでスタッドレスタイヤを買い換えているのでしょうか。数年で山がなくなるぐらい使い倒す方は別として、買い換え時を迷っている方は案外多いのではないかと思うのです。古くなるとゴムが硬くなって効きが悪くなることは良く知られていることですが、本当に危ない場面に出くわさないとイマイチそのような性能の劣化を実感できないということもあると思います。最近のスタッドレスタイヤは随分と効きが長持ちするようになったと言われてはいますが、まだ山が残っているからといってあまりに古い物を冬用として使い続けることはやはりそれなりのリスクを覚悟する必要があるはずです。

この辺の感覚はスキーブーツを買い換えるときと似ているところがあるのではないでしょうか。まだ使えるような気もするのになんだかもったいない。買い換えないと危ないと言われているけどイマイチ実感がない・・・。


スキーブーツの耐用年数はメーカーでは5年程度と言っています。ブーツフィッティングの詳細でも触れましたが、初期の性能が保てるのは2年程度ともいわれています。しかし実際には同じモデルの新品と履き比べることでもしない限り、3,4年たったブーツでもその違いを感じ取ることはなかなかできないでしょう。古くなるといつ割れてもおかしくないですよ、と言われてもピンとこないのも確かです。

買い換えの動機はインナーがへたったとか、技術的に物足りなくなったとか、なんとなくみすぼらしくなったとか、カビがはえたとか、直接には年数とは関係ないところにあったりすることのほうが多いのも、販売員をしていた経験からよくわかります。しかしブーツの割れは実際にそこらじゅうで起きていて、ゲレンデの中、宿からゲレンデまでの道路、スキー学校のホールとあらゆるところにブーツの破片が落ちていたりします。年末年始や春休み等、スキーをするのは年に1、2回といった方が多くいらっしゃる時期は特に目に付きます。

麓を歩いているときにいっそ一気にパカッと割れてくれたら怪我もしないで済みますし、すぐレンタル屋に駆け込む等その後の対応もしやすいのでしょうが、ソールが徐々にボロボロ崩れているのを知らずに一気にゴンドラで山頂に上がってスキーを履く段になって気付いたり(当然ビンディングがはまらない)、滑走中にいきなり割れて怪我でもしたら大変です。体は無事に済んだとしても麓までの距離を考えたら目眩がするなんてこともあるでしょう。(スキーに行くときはそこのパトロールの番号をケータイに入れておきましょう)


もし、最近使っていなかったブーツを引っ張り出してきて使う予定ができたら、あるいはそろそろ年数的にまずいかなと思ったら、必ず使う前にできればシーズン前に「破壊テスト」をしてください。難しいことはありません。木槌のようなものでガンガン叩いてみるだけでもいいです。実際に履いてみて硬い床に上から前から横から斜めからガンガン叩きつけるようにぶつけてみてもいいです。もしそれで割れたら運がよかったということです。その程度で割れるようでしたら、とてもスキーなんかできたものではありませんし、怪我や事故に繋がらなくてよかったと考えるべきでしょう。

もちろん割れなかったからといって安心してもいいものでもありません。古くなればなるほどリスクが大きくなるのは変わらないですし、スキー場で濡れたり強い紫外線に当たれば劣化もより進んでいくのは変わりありません。


ブーツの劣化がどれぐらいの速さで進んでいくかは滑走日数や保管状態によっても変わってきます。できるだけ長持ちさせるために気をつけていただきたいのはやはり保管状態ですが、ほんのちょっとした手間を掛ける気持ちが何より大事です。帰ってきたら汚れを落として水分もふき取っておく。インナーも抜いて乾かす。直射日光が当たらない、極端に高温になったり低温になったりしない湿気の少ない通気性のあるところに保管する。埃がかぶらないようにしておく。ビニール袋などで密封しない。など、どれもそれほど大げさな話ではありませんし、常識的に想像してよさそうなことをする、よくなさそうなことをしないというだけでいいのです。

注意していただきたいのは、汚れ落しに絶対にスキーの滑走面用のクリーナー(ワックスリムーバー)を使ってはいけないということです。もう10年以上前にブーツの輸入代理店の方に聞いた話ですが、その頃そんなに古くもないシェルの割れが煩雑に報告されるようになって、いったいどういうことかと調べてみたところ、ワックスリムーバーをブーツにも使っていた人が結構いたそうです。試しにワックスリムーバーをブーツに塗って自社の屋上にひと夏放置してみたところ、見事に次々割れて行ったそうです。

10年前と今とではプラスチック素材も進化しているでしょうから、そこまではひどくはならないかもしれませんが、ワックスリムーバーのような物はブーツには厳禁なのは変わりありません。水洗いだけでは物足りない方はプラスチックの保護を目的とした専用のクリーナーを使うことをお勧めします。そのような製品の中にはUVプロテクト効果や艶が出るなどの効果を併せ持っている物もありますので、より満足度は高くなると思います。


ブーツフィッティング企画を始めるにあたって「おおよそ3シーズン以内のシェル」という条件は厳しすぎるのではないかという意見がありました。しかし保管状態によってブーツの状態が違うからこその「おおよそ」であり「できない可能性」です。現実的にはおおよそ3年も問題を抱えたまま先送りにしている人も少ないのではないかということもあります。販売の現場での経験から、そのような古いブーツを持って相談にいらっしゃる方がいたとしても、結局は新しいブーツを購入してフィッティングをしたほうが得と判断される方のほうが多かったということもあります。

私などシーズン100日も滑るような人間は買い換えという言葉を軽く発しがちな面があることは否めません。実際に通常2年程度で買い換えていくことが多いですから、長く使っていただくという感覚をなかなか持てないということも正直あります。そういう意味で一般のお客様とは価値観が違うのではないかと言われれば確かにそうかもしれません。しかし私たちの場合、シーズン途中で壊れたときのダメージはお客様の比ではないと思いますし、愛用していた製品のモデルチェンジが改悪といえるような内容であった場合のストレスは恐らくお客様の想像以上でしょう。仕事で使う道具だからこそ壊れるリスクの大きい状態で使うことは極力避けたいことでありますし、また道具の大切さも誰よりも身をもって感じている種類の人間でもあります。


気に入って愛用している物に見切りをつけるのは勇気のいることですし、それに伴う出費も決して少ないものでもありませんが、安全で快適なスキーのためにいつどこでお金を掛けるべきかという損得勘定は是非とも冷静に行なっていただきたいと思います。


(おまけその6 おわり)