2003.2
第二稿

金魚のヘルペスウィルスとは!


 各地で今、ヘルペスウィルス感染症が猛威を振るっている! 
近年、秋の品評会において2歳魚、親魚の出品数が減っているのも事実である。

 この情報は日本らんちゅう協会中部本部、長野県水産試験場、愛知県水産試験場のご協力を得て、「らんちゅう広場」が取りまとめたものです。皆様のヘルペスウィルス対策に少しでも役立つことを願っております。


金魚のヘルペスウィルスとは!

 正式には「ヘルペスウィルス性造血組織壊死症」という。
感染魚の外観からは、特徴的な症状はほとんど見られない。病名の通り、肝臓の造血組織が冒されて貧血状態になり鰓を観察すると、健康な魚の鰓が赤色なのに比べ、病魚は貧血の度合いにより、ピンクから白っぽく見える。腹を開いてみると、やはり貧血の影響で肝臓や腎臓が白っぽく見える。この病気にかかると魚が弱り動きが鈍くなる。
体力が弱り、鰓ぐされ病、尾ぐされ病、そして多くの寄生虫病にかかりやすくなる。ウィルスに感染すると造血部位に潜伏し完治する事は無いとされている。ウィルスは28℃以上になると活動を停止する。

 解説
@ 人間の病気にヘルペスという病気があるが、
「ヘルペス」と言うのは病名ではなく、ウィルスの分類上の名称で、人間の「帯状疱疹」(たいじょうほうしん)に近いウィルス。又人間の「帯状疱疹」とは原因ウィルスの種類が異なるので、人間に感染することは無い。
A 錦鯉の乳頭腫病も同じヘルペスウィルス科に属するウィルスが原因の病気だが、同じウィルスではない。
錦鯉生産地で大量死の原因で、問題となっている「コイヘルペスウィルス(KHV)」も別の種類である。
B 和金は比較的かかりにくいと、いわれるが、どのような種類であっても感染する。また、フナも感染する。
C 錦鯉は発病しないがウィルスに感染しキャリヤとしてウィルスを保有するとの報告もある。
D  感染魚の外観からは、特徴的な症状はほとんど見られない。
したがって「尾に白い斑点がある」「尾に豆粒大の輪がある」等等は全てウィルスに感染した症状とは言えない。
これらの症状はコステアやキロドネラ他の病原虫&細菌に二次感染して現れた症状と理解すべきであろう。


 治療と対策
「ヘルペスウィルス性造血組織壊死症」はウィルスが原因のため、治療薬は無い。
病気の発生は4〜6月、10〜11月の春・秋2回の山がある。ウィルスは高温に弱い傾向があり、ヘルペスウィルスも例外ではない。
 


埼玉水産試験場の行った試験の紹介

・ 水温24.5℃の状態で人為的に感染させる
・ 順次水温を上げ31℃以上になると、死亡率が低下
・ 水温33℃で3日後、ほとんど死ななくなった
・ 水温33℃で4日後は全く死ななくなった

 
1. 変温動物である魚類にとって水温変化は大変なストレスとなり魚体を弱らせ死に至る事にもなるので、扱いには十分な注意が必要である。水温を上げる場合も下げる場合も、急激な変化は魚に大きな負担になるので魚の状態を良く観察しながら慎重に行う。
2. 病魚は貧血様態のため普段以上に十分酸素補給を行うことが重要。
3. ”ヘルペスウィルス性造血組織壊死症”は魚を外観で見て診断できる特徴的な症状は無い。したがって魚の様子がおかしいと感じ、ヘルペスと診断した時には既に他の病気に複合感染していると言うことになる。
4. 上記の試験場の実験では、健康状態の魚を無理やりウィルス感染させたので、ウィルスのみを考えることができたが、我々が病気の魚に気付いた時には、別の病気に複合感染している場合が殆どである事を、忘れてはならない。安易に水温を上げると、鰓腐れ病、尾腐れ病の病原菌や多くの寄生虫は概ね高水温で活動が活発になり、急速に病状が悪化する。水温を上げるにあたって病気の原因と、病状を確実に診断し、対処することが重要である。複数の病気に複合感染している場合は、抗菌剤の併用を検討する必要がある。
   
 感染経路
病原体(ウィルス)に感染する2つのルート
1. 垂直感染
 生まれた時に親からうつる垂直感染
2. 水平感染
 飼育水や魚の移動等による水平感染
  感染経路は以上の2ルートがある。
 
  感染の防止方法
1. 垂直感染を防ぐには
・健康な親を選ぶこと。
・産卵後受精卵をヨード剤(ポピドンヨード)で消毒した後、あらかじめ消毒をして無菌状態にした孵化池に卵を収容することで、親からの感染を防ぐことができる。
・すなわち、卵の内部、精子にウィルスは存在しないため、卵の外側を消毒することで親からの感染を防ぐことが出来る。
   
2. ・水平感染を防ぐには、感染の可能性のある魚は、親魚、稚魚を問わず自分の池に入れない。
・自家産の稚魚であっても、出来るだけ混ぜないで腹ごとに別々に飼う。
・飼育池は全池を一度に塩素消毒を行う。
・タモ等の飼育器具は池ごとに別々なものを用意する。
・飼育管理者は、手・足(長靴)を作業前後に逆性石鹸等で消毒する。
   


  寄生虫病に混合感染した魚  
 体表全体に白い粉を被った感じがする。
原因はギロダクチルギルスが吸着しているため。
写真では、わかり難いが、尾が白濁し更に尾先がボロ布のようにボロボロに溶け始めている。
ウィルスに感染すると寄生虫が付きやすく、寄生虫が引き金になって尾腐れ病、鰓腐れ病に感染することになりやすい。
 頭に付いたギロダクチルギルス
ダクチルギルスやギロダクチルギルスは吸虫類に属し、広い水温帯で被害が出る。比較的高い水温で被害が大きくなる。25℃では15分に1卵を生む。
繊毛虫類、鞭毛虫類の寄生も、症状がほとんど同じで区別がつき難いので十分注意が必要。
(治療薬が異なる)
 
鰓に寄生したギロダクの顕微鏡写真
 
写真提供:長野県水産試験場
 


上手にウィルスと付き合う!
現実の問題として、同じ池の魚にウィルスを持った魚と、持っていない魚がいる。
ウィルスを持っていても、ほとんど死なない池もある。
埼玉県水産試験場の報告データで「水温を上げて治療した魚は発病しにくい」という結果が報告されている。魚に何らかの耐性が付いたということが出来る。
このことにより、ワクチンの可能性もある。今後の研究に期待したい。
ただし、ワクチンが実用化し、市販されるまでには色々なハードルがあり、
ワクチンの市販については未知数。
大量死した池で生き残った魚は、病気に強い体質を持っている可能性が大きい。
ウィルス耐性の系統が出来る可能性もあり、期待するところである。

今、飼育者に出来る事はなんと言っても健康な魚を作ることです。
魚を良く観察し、異常を発見したら、すばやく的確な処置をする事が何より大切である。水質、環境、餌の質と量、飼育密度も重要である。
愛知県水産場の技師は、魚の健康管理を行う上で、寄生虫を完全にコントロールできたら、ウィルスに対する考えがずいぶん変わってくると語った。

感染魚は貧血状態になりやすいので、良質な餌を与える事が重要である。ビタミンEを強化した餌などメディカルな餌も近頃、市販されている。
   


制作・著作:らんちゅう広場
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