アルゼンチン紀行1

アルゼンチン紀行

南米のアルゼンチンにSLを追いかけてきたのじゃ!
14話に渡って記事はある。
何はともかく記事を読んでくれ!

第1話

大平原でワインを

日本は初夏だというのに地球の裏側でアルゼンチンでは秋も終わり初冬のよそおいだった。三回乗り継いでまるまる一昼夜飛行機の中でブロイラーのごとく無理やり食わされる機食にもうんざりした。もっぱらタダで飲めるウイスキーを飲んでうとうとするだけだ。日本をたって三日目の朝ようやく目的地のパタゴニア地方のバリロチェに着いた。
al-1.jpg
予想していたのとは大違いですばらしい町だ。「南米のスイス」と言われるとおり三千メートル級の山々に囲まれた大きな湖にはヨットが浮かびログハウス的なホテルやレストラン、そしてみやげ物店が建て並んでいた。今はシーズンオフで人通りは少なかったが、やがて雪が降ればスキー客で賑わうとのことだ。
さて、いよいよ私たち取材班(と言ってもSLマニア)一行九人は専用バスでSLが待つ機関区へ向かう。バスで五分も走ると景色は一変大砂漠に入る家も人影も全くない赤茶けた台地が続く、そのスケールの大きさまたびっくり。その大平原に一本の鉄路が通っている。そしてSLが引く六両編成の列車が今回の主役だ。それを四日間貸し切って撮影。大平原の真ん中に列車を止め昼食、世界のワインランク五位以内というワインを飲みながらこの上ない贅沢な旅だった。


第2話

豊かさ

パタゴニア地方に着いた日に泊まった「コーディレラ」ホテルはエル・ボルソンの街中にある。現地で五泊したうち三泊したところだ。al-2.jpgこの町は日本ならば軽井沢みたいなところで、夜遅くまで人通りがあり綺麗なみやげ物やレストランが建ち並んでいる。
夕食前皆で散歩をした。街路樹から落ちた木の葉が色づいていてとても綺麗だった。
風はひんやりとした高原の風であたりの山々は夕日にかがやきリゾート気分を全身で味わった。
幅広い道路に大きな家木立も多く人々はゆっくりとした足取りで散歩を楽しんでいる。アルゼンチン人の人間性と心の豊かさを感じた次第である。

第3話

機関士に感謝

al-3.jpg南米大陸の南西部パタゴニア地方は日本の国土の約三倍もある。
私たち一行が訪れたのはチリ国境に近く不毛の大地といわれるところだ。池や水溜まりには木も生えているが、他はトゲのある草だけの砂漠だ。
そんな所に通っている鉄路は放牧されている牛や馬、羊を運んでいるのだが、この時期は鉄道マニア用に解放されている。。
私たちはエル・マイテンからエルケルまでの165kmを四日間鉄路も含めて貸し切ったのである。
6両編成のSL列車は80年以上も働いているアメリカ製のSLを先頭に大平原をいったり来たりして思う存分撮影した。
大柄な機関士が一生懸命、煙を上げて走らせくれた。
ありがとうの気持ちを込めて「はい、ポーズ」

第4話

オアシス
al-4.jpg今回撮影をした165kmの区間に駅と思われる所が9カ所あったが人々が住んでいたのは3カ所しかなかった。ちょうど中間地点のレレケ駅には大勢の子供たちがいてすばらしい笑顔でモデルになってくれた。
線路の古い枕木をログハウス的に組上げて作った長屋風の建物が一棟しか見当たらないのにこんなに沢山の子供たちが出てきて驚いた。
羊の数の方が何百倍も多い大平原で不思議な風景である。
まるで砂漠のオアシスのようだった。
日本から持っていったあめ玉を一つづつ渡していたら後にいた大人の大きな手も出てきた。菓子屋など無いこの辺りでささやかな国際交流をしたような気持ちだった。

第5話

幻想
その昔、スペイン人が見た原住民の足「パタ」が大きい「ゴン」だったのでパタゴニアという名前がついたと言われている。500年前ヨーロッパ人が入植して原住民はほとんど居なくなった。今ではスペイン系の人々が主体である。
al-5.jpg
アンデス山脈を境にチリとアルゼンチンは南北に長い国である。その中でもパタゴニア地方はパンパ「平原」と言われ不毛の大地だ。年間を通して風が強く雨も多いところだ。私たちが取材していた四日間、毎日雨が降り朝は濃い霧につつまれる。この日も幻想的な風景の中をSLがエル・アイテン駅を出発した。
やがて大平原に出る頃は空も明るくなってはるか地平線の向こうに雪をかぶった山々が見えて素晴らしい眺めだ。そして牛や馬・羊の群れが転々と散らばり風景を引き締めてくれる。

第6話

チャーター料
al-6.jpgポプラの木によく似た大きな並木が続いていた。一度通り過ぎてから現地のガイドに頼んで列車を戻してもらいきれいな写真を撮ることができた。
夕暮れ時でやや露出不測であったが、そこは鉄道マニアのこと思いつくと何が何でも写したくなってしまうのだ。そんなわがままを快く受け止めて何度も止めてはバックして無理やり煙を出して走ってくれるのだからありがたいものだ。
高いチャーター料を払ってはいても申し訳ない気持ちで一杯である。

第7話

ほほ笑み
大平原の中におわんをかぶせた様な丘がありその周りをほぼ一回りをするように線路が通っている。この日は重連運転で素晴らしい絵になった。
al-7.jpg
丘の下に一軒だけ家があり煙が出ていたので誰か住んでいるのかなと思っていたら遠くから馬に乗った牧童が犬をお供にやってきた。SLの煙を遠くに入れて一枚撮らせてもらった。
人影など殆ど無いこのあたりで貴重な一枚になった。
見渡す限り地平線の荒野に生きているその人の目は恐ろしいほど鋭かったが俺の姿を見つけると口元がかすかに笑っているようでほのかな温もりを感じ冷たい雨に濡れていたのもすっかり忘れていた。

第8話

人間の勝手
al-8.jpg今回の旅で初めて間近に羊を見た。165kmのSL走行でちょうど中間点のレレケ駅前には数え切れない大群がいて圧倒された。
一人の老人がこんなに多くの羊を大した囲いも無いのに管理できるのだから人間が偉いのか羊が偉いのか分からなくなった。寝るときに「羊が一匹、二匹・・・」と数えるとよく寝付くと言われてきたが、これでは昼間から何回寝てしまうのだろうなんて馬鹿なことを考えてしまった。
そんな俺の姿を見て一匹のリーダー格が近寄ってきて「あんたどこの国の人?」と言われているような気がした。
17ミリレンズでも入りきれない羊達これからどんな運命が待っているのだろうと人間の勝手な感情をいだいてしまったのである。

第9話

時の流れ
al-9.jpg日本をたって五日目、現地での撮影二日目の早朝エル・ボルソンのホテルを専用バスで出発、約80分でSLが待っているエル・マイテン駅へ。二両生きているSLのうち今日は一号機で私達が来るのを煙を上げて待っていた。
早速、昨日と同じ車両の同じ席へおつまみを持って座る。
食堂車のおばさんに手招きの会話で(スペイン語の国でまったくわからない)うまい赤ワインを一本(5ドル)約550円でもらい持参のチーズをつまみに朝から一杯やる。雄大な車窓の風景を見ながら幸せなひと時をすごす。
SLは今夜の目的地エスケルの町へ向かって夕暮れの草原をひた走る。途中給水のため止まった駅は廃墟だった。朽ち果てた建物や池の水面が夕日に染まりやけに寂しさをさそう時の流れを感じた。

第10話

冬支度
al-10.jpg線路の枕木を再利用して作ったログハウス風のこのあたりの鉄道員が住んでいるものだ。
あたり一面の荒野では家らしきものはこれだけだ。
南極に近いパタゴニア地方の相当寒いことだろう。ガラス窓にはビニールが張ってあり寒風を防いでいる。燃料用の薪が沢山積んであったりして冬に備えている様子がわかる。
ここはナパルパンという駅で私達一行がSLと別れたところだ。
丁度、地元の学生達がバスでやって来て私達が降りたSL列車に乗っていった。そのときわずかばかりの交流をすることができた。

第11話

想い出の一枚
al-11.jpgナパルパン駅でSLと別れて帰路に着く。私達が降りたSL列車に地元の学生達が乗っていったのだが出発までのわずかな時間に国際交流ができた。身振り手振りで何とか心が通じ記念写真を撮ることができた。雪をかぶった山並みをバックに四日間行動を共にしたSLの前で想い出に残る一枚の写真が撮れた。
そして学生達を見送って私達一行も帰りのバスに乗って飛行場があるバリローチェの町へ向かった。

第12話

あまりにも美しくて・・・
al-14.jpg旅も終わりに近くなり現地最後の宿泊地エル。ボルソンのホテルを朝出発、約2時間のバスは大平原から山岳地帯を通りバリローチェの町を目指しひた走る。雪をかぶった山がきれいだったのでバスを止めて写真を撮る。
山越えが終わりになった頃、突然目の前をきらきら光る湖が目に入り感動してすかさず窓から一枚写す。
しばらくして湖畔の町バリローチェに着く。午前10時頃湖のほとりを散歩した。遠くに三千メートル級の山並みが見え湖面に姿を写し素晴らしい風景だ。なぜか大きなトラックが放置されていて不思議な絵になった。
足元の水溜りには氷が張っていたのに素足に「ビーチゾーリ」の俺は冷たさを忘れて風景の美しさに見とれていた。

第13話

のんびりタイム
al-15.jpgバリローチェの人口七万人・標高七百七十メートルの高原でナウェル・ウワビ湖を中心に広大な自然は国立公園である。夏は涼を求めてキャンプ、秋はあざやかな紅葉そして冬はスキー場となりこのあたりの一大リゾート地だ。
十九世紀末、スイス人が多く移住したため湖畔の町並みはヨーロッパ的で「南米のスイス」と言われている。
氷が張る湖畔を散歩して冷えきった身体を温めようとレストランに向かっていたら公園のベンチできれいな女性がパンフレットを見ていた。澄み切った高原の空気と湖面の光の中でのんびりとすごす姿はとてもすがすがしく感じた。こせこせと動き回るオレ達日本人が恥ずかしくなった。
昼食前、レストランで湖面を眺めながらうまいワインを飲んで少しばかりだったがのんびりできたような気分になった。

第14話

わが人生悔いは無い
al-16.jpg南米アルゼンチン、しかも南極に近いパタゴニア地方へSLの煙を追って旅をした。旅費70万円、飛行機で三日もかかる遠い国へ「SLバカ」のおじさんたちが良くも行ったものだと友人や近所の人たちに半分呆れ顔で言われたが、やはりSLが好きなんだ。誰になんと言われても「体力」と「金力」が続く限り追い求めていくだろう。
わが人生に悔いは無い。
そんな俺達の生き様をうらやむ人も多い。高い金を使って撮影した写真がなんの役に立つのか疑問がわいてくる。「失われてゆく文化遺産を写しとめる」事もひとつ。「好きだから写す」のもひとつ。「出来上がった写真を大勢の人に見てもらう」気持ちもひとつ。
あれや、これや云っても、やはりうまくきれいに写れば全てを忘れてハッピーである。