まず、ワキガの手術に対する当院形成外科の見解を述べさせていただきます。現時点ではワキガの手術は入院治療を原則としています。ただし、佐久病院のご近所にお住まいの方では、日帰り手術の対象になりうる場合もございます。

 入院手術をお勧めする理由は、ワキガの手術では術後に血腫(皮膚の下に血液が溜まること)が発生する可能性があるからです。これは、術後48時間以内に起こることが多いのです。術後の痛みが手術そのものによる痛みなのか、血腫によるものなのかは、ガーゼをはずして縫合部を観察しなければわかりません。血液が縫合創の皮下に溜まりますと、皮膚の血流障害や痛みが生じ、そのまま放置してしまいますと、皮膚の壊死(えし)に至ることさえあります。もちろん、手術時に血腫予防の工夫は施しますが、いったん血腫が生じましたら、速やかに血腫の除去や止血処置を行う必要があります。
 日帰り手術では帰宅後は自己管理となりますので手術を受ける患者様はもちろん、術者にとっても多少不安が残ります。少なくとも術後数日間は入院され、安静を保ち、ケアを受けられたほうが安心かと思います。特に、病院から遠方の患者様はなおさらでしょう。なお、当院ではこれまでに血腫による皮膚の壊死をきたした患者様はおりません。

 さて、手術を希望される方はまず、初診を受けていただく必要があります。ここで、手術に関する説明を聞き、手術日を決め、入院の予約をしていただきます。時間があればその日のうちに術前検査を行います。

 手術の麻酔方法は基本的には全身麻酔を用いますが、希望により、局所麻酔でも手術が可能です。局所麻酔では手術当日に術後入院となりますので、入院期間は1日間短縮されます。

 全身麻酔で手術を受けられる場合の入院治療の流れを説明します。まず、入院初日に麻酔担当医が入院病棟に訪問し、診察した後、麻酔の説明を致します。また、これに先がけ手術担当医から手術の説明受け、手術の同意書にサインをしていただきます。2日目に手術を行い、術後3〜5日目にドレーン(皮下に溜まった浸出液や血液を外に排出させるための、やわらかいシリコンチューブ)を抜きます。術後の痛みはそれほど強くはありません。ほとんどの痛みは鎮痛剤でコントロールできます。術後7日目に抜糸を行い、術後8日目に退院となります。したがいまして、10日間の入院が必要となりますが、ドレーン抜去後に浸出液の量が少なくて、手術創の自己管理ができそうでしたら、抜糸前に退院が可能です。この場合、抜糸は後日外来で行うことになります。

手術当日に入院希望の場合は、日帰り手術センターを利用していただくことになります。あらかじめ麻酔科外来で術前の診察(外来の予約が必要)を済ましていただきますと、1日間入院期間を短縮することが可能です。その場合、手術当日来院していただき、術後に入院となります。

どうしても入院はイヤだ、まったくの日帰り手術にしてほしいという方。この場合は、はじめに説明しました通り、あまりお勧めできないプランですが、どうしてもと、強いご希望がありましたら考慮いたします。まず、局所麻酔を希望される方は、外来で術前検査のみ済ましていただききます。麻酔科外来の受診は不要となります。全身麻酔をお選びの方は、手術日以前に従前検査と麻酔科外来の受診(別に予約が必要)を済ませていただきます。また、いずれの麻酔方法をお選びの方も手術当日に来院していただき手術を受けます。術後は日帰り手術センターの回復室で数時間ほど過ごしていただきます。出血がほとんど無く、痛みが十分コントロールされ、吐き気が無く、お飲み物と食事の摂取ができ、トイレまで自分で行くことができる、といったことが可能であれば帰宅することができます。ただし、翌日には必ず再診が必要です。血腫がないか、化膿していないか、循環障害がないか等を確認するためです。また、別日にドレーン抜去や抜糸の処置のための再診も必要となります。在宅中に何か異変が生じました場合は何時でも直ちに病院に連絡していただきます。担当医の診療を受ける必要がありましたら再度来院していただきます。なお、手術当日来院される際は、必ず付き添いの方を伴ってください。また、自家用車で来院される場合は、術後は患者様が自ら運転はされませんように。そして、時間の余裕をもってお越しください。

 手術法は反転剪除法、掻爬吸引法、超音波メス法、吸引削除法などがあります。当院では反転剪除法(はんてんせんじょほう)を用いていますのでこれについて説明しましょう。腋窩中央のしわに沿って約4cmの切開腺を通常1本入れ(必要によっては平行な切開を2本入れます)、有毛部皮下を剥がして反転し、直視下に臭いの源であるアポクリン汗腺を切除します。その後電気凝固器にて十分に止血を行って、剥がした皮膚は所々皮下に縫い付けます。ドレーンを挿入して切開部を縫合します。ガーゼで覆ってテープで固定します。

 術後は顔を洗ったり髪の毛をとかしたりするぐらいの腕の挙上は可能です。手術翌日は下半身のシャワーができます。上半身の清拭や着替え、洗髪はスタッフに手伝ってもらえますので全身の清潔さも保つことができます。

 術後の傷跡は、術後数か月ほど赤みをおびていますが、まもなく白くなり(人によってはわずかに色素沈着を残すものもあり)、しわに沿った1本(ないしは2本)の線になります。両腕を挙上されてもほとんど傷跡は目立たなくなります。肝心のワキガの臭いはかなりよく取れ(まったくの無臭はありえませんので)、ほとんどの患者様から臭いが気にならなくなったとの評価を得ております。また、アポクリン汗腺を剪除する場合、エックリン汗腺(汗の腺)と毛根(もうこん)もかなり剪除されますので、腋窩の発汗が少なくなり、毛の密度も低くなります。ただし、完全な脱毛には至りません。多少脱毛効果があるということです。長期的に見て患者様の満足度は高いものです。

 ワキガの治療費については、医事課にたずねましたところ、当院では保険が利きますので、手術代、麻酔代、お薬代、処置代、10日間の食事代その他を含めて個人負担は、3割負担者で約10万円位ということです。なお、術前検査費と外来通院費は別途かかります(数万円)。また、日帰り手術の場合は、前述しました金額の半分ぐらいになるそうです。もし、私の身内の者や知り合いの方が保険診療でこの手術を受けますならば、入院治療を勧めるでしょう。入院治療のほうが安心ですし、費用もリーズナブルと思います。また、血腫などの心配がなくなれば退院も多少早めることができます。なお、クリニックによっては自費診療のみで保険が適応されないところがあります。

 手術を受ける季節としては涼しいい時期のほうが術後はいくぶん過ごし易いかもしれません。ただし、暑い季節だからといって化膿しやすいということはありません。

 さらに詳しい内容は、当院形成外科外来を受診していただき、担当医から直接説明をお聞き下さい。なお、初診の方は受け付けが必要です。再診の方はすべて予約制です。
形成外科の診療日などはこちらでご確認ください。