サンシャイン2057

日付:2007.05.12

サンシャイン2057」とは何とダサいタイトルだろう。池袋を舞台にした3流SF映画としか思えない。タイトルを見ただけで観る気力が萎えてしまいそうだ。しかしこれは久々のカルトムービーの登場といえる。原題は「SUNSHINE」でいたってシンプル。映画も文字通り太陽の光を取り戻そうとする話である。ストーリーはさっぱりわからないがアート作品として観ればかなりイケてる映画である。「2001年宇宙の旅」、「エイリアン」の流れを汲む正統派イギリス的SF映画で硬質かつシャープな映像がいい。

に瀕した太陽をもう一度生き返らせるために、超大型核爆弾を搭載した宇宙船イカロス2号が、太陽に核爆弾を投下するまでの航程。宇宙船の名前が「イカロス」とは、ギリシャ神話の太陽に届かずに墜落した「イカロス失墜」にちなんでいてあまり縁起が良くはない。(地球上のウランをすべて使ったという)核爆弾ぐらいで死にかけた太陽が、短期的には有効かもしれないが、果たして蘇るものだろうかという点には疑問は残る。

フレアのあがる巨大な太陽を背景に、太陽熱を巨大なシールドで防ぎながら宇宙空間を航行する宇宙船の光景は何とも壮大である。イカロス2号の船長が船外で太陽熱をもろに浴びて死んでゆく描写などは、荘厳死とさえ言える。こんな壮大でアートな光景をおそらく人類ではじめて一瞬でも目にして死ねるのなら本望かもしれないとさえ思えるほど。地球上にいれば人間の個々の人生というのは具体性があるが、宇宙空間においては、人間の生命など宇宙塵と同じくらいの価値しかないというような無常観を覚える。地に足が付いていないからだろうか。

宇宙船内のセットやテクノロジー関係もかなりの密度のあるものだし、安っぽい感じはない。哀調夥しい黙示録的ゾンビ映画「28日後・・・」のスタッフの手になるものだ。「SFとは絵だ」と誰かがかつて言ったが、その言葉通りの映像を随所に見ることができる。ハードSFといった感じで、まさに「スペース・オディッセイ(2001年宇宙の旅)」である。

アートにこだわるあまりか、ストーリーが分かりにくい。以前に遭難したイカロス1号の救助信号を受信し、1号のもとに向かう途中、コース変更の計算違いか何かにより2号自身も遭難の危機に陥ってしまうのだが、このへんから状況がよくわからなくなる。それから神がかりになった「エイリアン」的侵入者が登場し、乗組員は次々に殺されて行く。このあたりもどうも話について行けずに、最後の爆弾投下まで何が起こっているのか判然としない。侵入者の姿を視覚的に歪ませたりして意図的にはっきり見せないなど、映像的に凝り過ぎているせいもあるだろう。

船長役の真田広之はすぐに死んでしまうのが残念だが、8人のクルーのうち最後まで残るキリアン・マーフィーと女性航海士ローズ・バーンがそれぞれ印象的だ。映像の光の明滅の激しさが、鑑賞中に体調不良の原因として「バベル」で問題になっているが、この映画はその比ではない。「バベル」なんかよりずっと激しいがそれでも何ともなかった。あれは何かの間違いだろう。


 ●監督◎ダニー・ボイル
 ●脚本◎アレックス・ガーランド
 ●美術◎マーク・ティルデスリ−
 ●音楽◎ジョン・マーフィー&アンダーワールド
 ●主演◎キリアン・マーフィー
 ●共演◎ローズ・バーン ミッシェル・ヨー クリフィ・カーティス クリス・エヴァンス トロイ・ギャリティ 
       ベネディクト・ウォン 真田広之

    
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