ローグ・アサシン

日付:

2007.10.16

 「用心棒」+ジョン・ウーばりのアジアン・アクションを人種の坩堝アメリカでやっている。主人公は中国系の殺し屋とアメリカ人のFBIの捜査官。さらにチャイニーズ・マフィアとジャパニーズ・ヤクザが入り乱れる。舞台はサンフランシスコの東洋街「ヤクザ・シティ」。対立する勢力のどちらをも裏切って、結局両方を壊滅させてしまうというのは、日本映画で言えば「用心棒」、さらに原典を探せばダシール・ハメットのハードボイルド小説に行きつく古典的な設定だ。

FBI捜査官のジャックと相棒の中国系アメリカ人トムは殺し屋ローグを追っていた。現場を押さえた2人は、ローグを追い詰め、相棒のトムが銃撃するが、海へ落ちて生死はわからない。数日後トム一家が惨殺され、現場の薬莢からローグの仕業だとわかる。3年後、チャイニーズ・マフィアとヤクザの抗争地帯に再びローグが現れ、両勢力とジャックたちを翻弄する。ローグはその度成形手術をして顔を変え、本当の素顔は誰にも分らない。ジャックは相棒の復讐に燃え、チャイニーズ・マフィアはヤクザに30年来の恨みがあって、一族の復讐をかけている。そこにジャックの相棒だったトムに関するもう一つの復讐劇が加わる。ローグの顔はアジア系である。三つ巴の復讐戦が始まる。

一応筋の通ったどんでん返しはふたつ用意されている。ひとつはジャックに関するもので、もうひとつはローグの素性の驚愕の真実である。「パーフェクト・ストレンジャー」などに比べればはるかに受け入れやすいのだが、考えてみると、ローグは3年前ヤクザに雇われていた時はどんな素顔で雇われていたのだろう。素顔を見せないまま仕事だけやっていたと言うことだろうか。ローグがトム一家を殺す時も仮面を付けている。これが伏線になっているのだが。

「ヤクザ」の描かれ方が、「ブラック・レイン」で松田優作が演じたジャパニーズ・ヤクザから一歩も出ていないのは、要するにあれが限界なのであろう。日本のヤクザだったら、(映画的には)長ドスといわれる刀であって、まず鍔の付いた正式な日本刀など振り回さないだろう。彼らはサムライではないのだから。それに「ラスト・サムライ」と同じように、とうとう忍者まで登場してしまう。こういう映画で日本といえばどうあってもサムライとニンジャはセットであって、これを出さなければ(アメリカでは)気が済まないということだろう。手裏剣が出て来なかっただけ良かったと言うべきだろう。

ジェット・リーは、日本ではコメディアンの山口良一(注)にそっくりで大分損をしていると思う。今回あまりに無表情ですましてばかりいるので特にそう思えた。デヴォン青木の醜女ぶりは「シン・シティ」以来さらに磨きがかかり、その姿態は球体関節人形を思わせる。ただのブスと侮るなかれ。石橋 凌のヤクザの組長は、織田信長に憧れる変なヤクザだが、悪役として一応堂々とやっている。彼を見たくて映画館に行ったようなもの。しかし紋付、袴というのもあまりに日本を意識し過ぎており、襲名式じゃないんだから・・・ウーン。

見間違いでなければ、ヤクザの食事会が行われる料亭の座敷の掛け軸だったかに「下手の横好き」と大書されていた・・・ウーン。これユーモアのつもりでないことは明らかなのだが、現場で誰も注意しないのだろうか。いや、ケシカランと言っているわけではない。思わず叫びたくなるが、逆に面白い。日本映画では絶対にお目にかかれない光景だから。さらに組長の米国オフィス(柳川自動車商会?)に「治にいて乱を忘れず」など読んでタメになる格言の大仰な垂れ幕あり。

字幕・林 完治


(注)1980年代に一世を風靡した萩本欽一の「欽ちゃんのどんとやってみよう」で「良い子悪い子普通の子」の「良い子」。イモ欽トリオのひとり。

 ●監督◎フィリップ・G・アトウェル
 ●脚本◎リー・アンソニー・スミス グレゴリー・J・ブラッドリー
 ●音楽◎ブライアン・タイラー
 ●主演◎ジェット・リー ジェイソン・ステイサム
 ●共演◎石橋 凌 デヴォン青木 ジョン・ローン テリー・チェン ケイン・コスギ ルイス・ガスマン
    
映画見よう見まねへ戻る