世界最速のインディアン

日付: 2007.02.15

 自分の体のように使い込んだ機械マシンと年老いた男バート・マンロー。年金暮らしの彼だが、40年も共に生きた幻のオートバイ「インディアン・スカウト45」とともに故国ニュージーランドからアメリカに渡り、長年の夢であるユタ州のモータースポーツの聖地ボンヌヴィルに向かう。改良に改良を重ねた愛車インディアンを駆って、かの地で単車世界最速記録に挑戦するのが、彼の夢なのである。
 元気な老人が巻き起こす人生の奇跡。自分の行動原理に素直な彼は、ウソの無い率直な人柄で周りの現実を次々に突破してゆく。夢に一直線な彼の生き方は、老いの頑固一徹とはちょっと違う。夢見ることの素晴らしさを観るものに教えてくれるという意味で、思い出すのは、宮崎駿のアニメである。彼のアニメに出てくる元気なわが道を行く老人のように自由である。彼を奇人と言うなかれ、貴人と言うべきだ。
 の途中、様々な人との出会いがあるが、インディアンにあって不思議な薬をもらったり、老いた未亡人と一夜を共にしたりするのだが、その中でもモーテルの受付をやっている黒人青年・・ティナが抜群に印象的だ。この道中で会う人々は、すべてわが道を行く人たちだ。人生何があってもわが道を行く事ほど大切なものは無い。そしてわが道とは、夢を見る力によって叶えられるのだといっているようである。
 ネガティブな人間はここには登場しない。人を出し抜いたり、騙したり、利用したりすることがない善意の世界で成り立っている。目的地のボンヌヴィルに着いても、スピード・ウィークの応募期限が切れて参加を認めてもらえなくなりそうになったり、オートバイがオンボロ過ぎて、危うく走行を許可されないなどの障害はあるにしても、すべてバートの率直な熱意と周囲の善意で解決される。
 どこの誰であれチャレンジする精神を認めようという健全な(ヒューマンな)アメリカン・スピリットと、いい意味での敬老精神(つまり年季の入ったものに対する尊敬)がここでは生きている。この主人公には実在のモデルがいる様だが、ノンフィクションというより、バート・マンローという愛すべきキャラクターによって生み出された、大人のメルヘンとでも言ったほうがいいだろう。しかし、このタイトルはアメリカインディアンの陸上選手の話かと思った。一考を要す。
 字幕・戸田奈津子


 ●監督◎ロジャー・ドナルドソン
 ●脚本◎ロジャー・ドナルドソン
 ●音楽◎J・ピーター・ロビンソン
 ●主演◎アンソニー・ポプキンス
 ●共演◎クリス・ローフォード クリス・ウィリアムス アーロン・マフィー ダイアン・ラッド

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