魔法にかけられて

日付:

2008.04.04

 逆説的なおとぎ話(おとぎ話のパロディ)ものとしては、すでに「シュレック」のパターンが存在するので、別に目新しさは感じない。おとぎ話の世界と現実世界(ニューヨーク)が繋がっており、悪い女王(つまり魔女)に、おとぎの国から現実の世界に追放されてしまったプリンセスが主人公である。プリンセス・ジゼルにはおとぎ話のお約束通りの相思相愛のプリンスがいて、彼もプリンセスを追って現実世界にやってくる。さらに魔女が送り込んだドジな手下に続いて、魔女本人もニューヨークへ・・・。

おとぎの国はアニメで描かれている。このアニメ部分が「白雪姫」「シンデレラ」当時の往年のレトロ&クラシックな色調で古臭い。いまどきのアニメとしては古色蒼然として元気がない。今の子供が対象なのだろうし、なにも懐古趣味になる必要はなかったのではないか。

映画の入り口および道具立てはディズニー・アニメだが、進むにつれて「サウンド・オブ・ミュージック」あるいは「メリー・ポピンズ」、つまりジュリー・アンドリュース主演のこの2作を足して2で割った感じがしてくる。世間智皆無のプリンセスの愛らしさとともに母性を感じさせなければないキャラクターなのだが、主演女優(エイミー・アダムス)は、それにしては老け過ぎで、元気よく歌はうまくこなしているものの、小ジワが目立ちやや興ざめである。メリー・ポピンズは空から降りてきたが、ジゼルはマンホールの蓋を開けて出てくる。

ジゼルが、ミュージカル・ナンバー♪思いを伝えて♪を公園で歌い出し、群舞の大合唱になっていくところは、定石通りのミュージカルらしさはあるのだが、彼女の行くところ幸せなミュージカルになってしまうのがちょっと簡単すぎる。世界がいとも簡単に歌い出してしまうのは、キャッチフレーズの「現実の壁」をほとんど感じさせない。現実世界では、ジゼルは単なる勘違い女であるはずなのだが、現実との葛藤が感じられず、物わかりが良過ぎる。おとぎの国のプリンセスを受け入れる方向にしか「現実」は作用せず、プリンセスを否定する要素がほとんどないのだ。これでは否定されて後の挽回という、観る者が溜飲を下げるパターンが生まれないのである。

面白くないのは、現実世界に悪役がいないことある。悪役はあくまでおとぎ話の世界からの追手(それも魔女の家来と本人のみ)である。物語がシンプル過ぎて、アクがなさすぎる。(魔女を演っているのはスーザン・サランドンで、これはかなりアクのある個性派女優だが、それが生かされてはいない)ニューヨークへやって来たその魔女が、自分の悪さがニューヨークの現実の醜さに歯が立たず、逆にプリンセスたちと協力して、おとぎ話の世界を否定する悪い人間たちを懲らしめる、というようなストーリーだったらおとぎ話の逆説も生きたのではないか。魔女がニューヨークでドラゴンに変身して暴れるラストなど、お子様向けの典型で何の目新しさも感じない。

まぁ、そこまで意地悪く作らなかったということだろう。結末で(もちろんハッピーエンド)メルヘンの世界と現実世界で主人公の入れ替わりが起きてしまうところは新鮮だった。

字幕・古田由紀子


 ●監督◎ケヴィン・リマ
 ●脚本◎ビル・ケリー
 ●音楽◎アラン・メンケン
 ●主演◎エイミー・アダムス
 ●共演◎パトリック・デンプシー スーザン・サランドン ジェームス・マースデン ティモシー・スポール
    
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