ドリームガールズ

日付: 2007.02.26

 上昇、成功、分裂、失意、そして復活という物語の王道パターンを実に分かりやすく踏襲している。オリジナルは25年前のブロードウェイ・ミュージカル。話が分かりやすいのも当然である。3人の黒人女性ボーカルグループ「ドリーメッツ」が、コンテストから頭角を現し、有能なマネージャー、カーティスのもとでカリスマ的(ジェームス・ブラウン風)ソウルシンガー、ジェームス・アーリーのバックコーラスを皮切りに紆余曲折の末、ついに頂点に上り詰め、最後に解散コンサートをするまでを描いている。ダイアナ・ロスとシュープリームスやスリー・ディグリーズなんていうグループも思い浮かぶ。
 成功すればするほど、かつての自分らしい生き方を裏切ってしまうジレンマ。売れるということは、自分自身を高めることではなく、消費することでしかなかったと気づいてゆく。グループの名前も「ドリーメッツ」から「ドリームズ」へ。黒人音楽へのこだわりも捨てざるを得なくなる。その成功の行き着く果ては和解と別れだった。
 ソウル・ミュージックと日本のポップスや演歌との違いは、口語と文語ぐらいの違いがある。労働歌の流れもあるのだろう。日常生活の言葉や行動がそのまま歌になっている感じで、それが一層進化してラップミュージックが生まれるのも不思議ではない。口語が日常的・具体的であるのに対して、文語は抽象的・観念的なのである。これは言葉そのものが音楽になっているともいえるし、すべて音楽になってしまうのは少々うるさいともいえる。
 話題のジェニファー・ハドソンの歌声には、アレサ・フランクリン並みに物凄いなと思う部分と、ちょっとくどいなと思う部分があった。このくどさは、黒人音楽特有のオリジンとしてのくどさかもしれないし、エフィ(ジェニファー・ハドソン)というキャラクターのくどさにもつながって、決して規格化されない個性の強さとスケールも感じさせる。そして、映画全体を単なる音楽映画とはしない個性にもなっているようだ。
 ジェニファー・ハドソンは、今この時点でアカデミー助演女優賞を受けたが、助演ではすまないような出番の多さで、印象としては、この映画の誰よりも、ジェイミー・フォックスやエディ・マーフィーよりもこの物語を支えるキャラクターだった。タイトル的にはビヨンセ・ノウルズが主演格。彼女を中心にしたエピソードもそれなりにあるのだが、ジェニファー・ハドソンのアクの強さとパワーで完全に押し切られてしまい、物語の構成がふたつに分裂してしまっているほどだ。
 最近のハリウッドの特徴として、アカデミー作品賞と監督賞を取った「ディパーテッド」もそうだが、オリジナルな企画に基づく映画が減っているように思われる。かつての名作や他国の話題作をリメークすることが多いように思う。懐古趣味なのか、企画力が弱くなっているのか。
字幕・戸田奈津子


 ●監督◎ビル・コンドン
 ●原作◎トム・アイン
 ●脚本◎ビル・コンドン
 ●音楽◎ヘンリー・クリーガー
 ●主演◎ジエイミー・フォックス ビヨンセ・ノウルズ
 ●共演◎エディ・マーフィー ジェニファー・ハドソン ダニー・グローバー アニカ・ノニ・ローズ シャロン・リール

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