墨攻

日付: 2007.03.03


 日本発のコミックが原作。オリジナル原作は酒見賢一の中編小説。これは読んだが、マンガのほうは未読である。出演者も香港・韓国・中国から集まっている。日本からは撮影監督に坂本善尚、音楽に川井憲次が参加。何せ中国が絡んでいるのでスケール的には申し分のない。
 舞台は中国春秋時代からの戦国期の頃。紀元前のこの頃は思想的にも、孔子、荘子、孟子、孫子、そしてこの映画に取り上げられている墨子などが登場して、乱立する各国に戦時政策を提唱したらしい。大国趙国の攻撃にさらされている弱小国梁国の王は、「墨家」に自国の防衛のために救援を頼む。墨子の興した「墨家」は専守防衛思想の実践集団として有名だった。ところが来たのはたった一人の革離(かくり)というボロをまとった男一人のみ。それでも王は彼に軍隊の指揮権を委ね10万もの趙の大軍を迎え撃つことになる。
 梁国の城を要塞として造りかえるところまでは、「ひとり七人の侍」的な雰囲気で悪くない。美術的にもかなりの重量感を感じさせる。これからどんな策略で城を守ってゆくのか期待を持たせる。
 墨家の思想は「非攻」・「兼愛」というらしいが、それを裏付けるような描写がないので、結局彼は単に城を守って戦っているに過ぎないように見えてしまう。地理的説明や戦況の具体的説明が全くといっていいほどないため、次第に何がどうなっているのかさっぱり要領を得なくなる。
 趙国の出方を探るため、敵の大将巷淹中と城外で碁のように石ころを並べて机上のゲームをするところが最初にあるのだが、石の並べ方を全く写さない。これでは盤上で何がおこなわれているのかさっぱり見えないし、勝ったのか負けたのかぜんぜんわからない。このことが象徴するように、戦争映画らしく群衆シーンはふんだんに用意されているのだが、俯瞰描写がないので戦況が呑み込めないのだ。ただ戦闘しているだけで、物語の進行に効果を発揮していない。要するに映画としてかなり説明不足なのである。
 最後は大国趙が梁国を攻めあぐね、撤退し守城には成功するのだが、逆に今度は自国の民を革離に支配されてしまうかもしれないという疑心暗鬼の虜になった梁王の政治的謀略によって、革離は梁を追放されてしまう。ここから政治権力闘争の醜さが描かれていくのだが、どうもそれまでの戦争シーンとの乖離が激しく、取って付けたようであり、ドラマとしてのカタルシスを著しく損ねている。これではせっかく守った国の王が愚か者であったというだけの話であり、何の救いもないでないか。地下水の突然ともいえる爆発的氾濫とか、趙国の大将巷淹中が逆に梁王に討ち取られてしまうのも何だか意味不明。
 字幕・小坂史子


 ●監督◎ジェイコブ・チャン
 ●原作小説◎酒見賢一
 ●原作◎森 秀樹 久保田千太郎
 ●脚本◎ジェイコブ・チャン
 ●音楽◎川井憲次
 ●主演◎アンディ・ラウ
 ●共演◎アン・ソンギ ファン・ビンビン ワン・チーウェン ウー・チーロン チェ・シウォン

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