ベオウルフ -呪われし勇者-

日付:

2008.01.06

CGで動作のデータをコンピュータにインプットするのがモーション・キャプチャーだが、主に顔などの表情をインプットするのをパフォーマンス・キャプチャーというらしい。この映画はそういった技術で作られている。俳優の顔の演技をアニメに置き換えていったい何の面白味があるのか実に不可解だ。主要登場人物が、誰でも知っているほど有名な俳優ならばともかく、この配役では、主役のレイ・ウィンストンをはじめとして、ロビン・ライト・ペンなどは地味だし馴染みがない。つまりアニメで作った顔なのか、実在の俳優の顔なのか区別ができないのである。

映像マニアの実験作ならわからないでもないが、人間の精妙な表情の変化を、アニメで生気のない表情に再表現されても、有り難くも何ともない。―そうなのだ。彼らの表情には生気というものがなかった。デジタルで厚化粧されてフリーズしていた。ジョン・ウェインやオーソン・ウェルズやオードリー・ヘップバーンがデジタル化されてこの映画で蘇っているなら、それも一興だが。

いくらCGだからといって、主人公ベオウルフを全裸の♪タンタンタヌキの■▲ブ〜ラブラ状態で怪物と闘わせたり、怪物の母をアンジェリーナ・ジョリーにやらせて、全裸にして全部見せたりしたからといってどうだというのだろう。これらはパフォーマンスでしかない。そんな必要があるのか。失笑ものだ。どうせやるなら、子供向けではないのだから、性器までCGでちゃんと作ってしまうくらいの覚悟が必要なのではないだろうか。中途半端だ。

500年ごろのデンマークの英雄譚をもとにしている。英文学的には有名な話なようだ。内容および映像は陰鬱で明るいものではない。何だかディズニーのおとぎ話の世界を思わせる出だしは、結末から遡ればかなり違和感がある。この映画で辟易したのは、まったくの英雄万歳なところが多いことである。「国王万歳!」、「ベオウルフ万歳!」ばかりが耳につき、単調極まりない。やっていることは馬鹿力の誇示のみで、眠気を催すほどだ。

ラストにはドラゴンとの大決闘はあるものの、いわゆるお約束の活劇といった印象で、文字通り「身を切るような」場面もあるのだが、目の覚めるようなものではなかった。ベオウルフという英雄もその前に「男」であり、妖女の色香に迷い、自分も周囲も裏切ってしまうという、「人間」としての部分も描かれるのだが(サブタイトルの「呪われし勇者」の由来)、そのような成熟した物語の陰影を描くためにCGアニメという手法は相応しいものとは思われない。

チラシに言う如く、「ロード・オブ・リング」並みの壮大なストーリーもなければ、「300」並みの映像的刺激もない。英雄群像劇や集団抗争活劇と比べれば、これはいわゆる一品もので比較するのさえ無意味である。一部の劇場では3−D(立体映画)として、立体メガネを付けて観るバージョンを上映しているらしい。そちらを観たいものだが、印象はだいぶ違うだろうか?以前、「JAWS」シリーズの一本(たしか「JAWS 3−D」)を立体メガネで観て、つまらな過ぎて頭痛がした思い出がある。

字幕・太田直子


 ●監督◎ロバート・ゼメキス
 ●脚本◎ニール・ゲイマン ロジャー・エイバリー
 ●音楽◎アラン・シルベストリ
 ●主演◎レイ・ウィンストン
 ●共演◎アンソニー・ポプキンス ジョン・マルコビッチ ロビン・ライト・ペン アンジェリーナ・ジョリー 
    
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