雲雀集 '86/4



来ぬ人を待つも楽しき初句会

友の顔次々揃い初句会

梅の香に乗せて運ばれかぶらずし

如月のおすゝめ料理すずめ鯛

紅に燃ゆるバラあり酒もあり




雲雀集 86/5



先を往く女人も時雨る神楽坂

田の形に雪の残れる休耕田

みちのくの田は田の形に雪残る

杯に落花舞ひ来ず見上ぐのみ

落花ひとひらつい杯に入り損ね




雲雀集 '86/6



主なき湖畔の別荘梅盛り

マイハズバンドと大声で行く花見客

根津権現の桜吹雪にロケが来る

桃咲いて眼科分院休診中

蜜蜂に蝿も混じりてつヽじ苑




雲雀集 '86/7



風吹いて噴水急に低くなる

噴水に坐れば噴水高くなる

噴水で落ち合う予定のカンビール

噴水の虹すかし見る二人連れ

噴水に金髪女の大あくび




雲雀集 '86/8



自転車が一台通る木下闇

祭半天にカメラ下げて女行く

祭半天裸足で金髪女行く

ダイアナの紅い着物に風薫る

松の湯に葬儀ある日の梅雨暑し




雲雀集 '86/9



万緑の上なる天主松山城

リボンつけた犬連れた娘に秋立ちぬ

地蔵尊に鳥止まりけり暮れの秋

芝生にて裸の坐禅異国人

缶ビール二本で何時まで語る人




雲雀集 '86/10



キープしたボトルはなくて夏終わる

降るほどの銀河の中行く列車かな

バナナと書いて芭蕉苗置く花屋かな

通勤バックも頭陀袋めく破芭蕉

草の戸の句碑に歩めば百日紅




雲雀集 '86/11



芭蕉稲荷の小さき祠赤のまま

芭蕉庵出れば墨田の都鳥

都鳥二羽並び浮く墨田川

ほそ道へ続く道なり雁渡る

風に揺れて揺れても動かぬ秋の蝶




雲雀集 '86/12



かぎになって来る雁ほそ道遥かな

鳩の群に烏二三羽秋時雨

山の茶屋本日定休はぜ紅葉

街灯も黄色く灯もるすゝきの野

すゝきの野行けば芦の湖見えて来る