都 の 四 季 (作品)

 菊池 都





        

饒 舌

(1996年) 秋澄むや靖国通り一直線 師の夢に一歩近づき十三夜 色鳥のすべてを空に預けてる ゆったりと待つ歌舞伎座の暦売 席題の水仙こころ揺るがせり 臘梅の日を溜め一つひとつ咲く 梅林の土に饒舌落ちてをり 春潮に漂う闇の動き初む 無意識も意識も被う花の下 句座覆う雨の気配や花菖蒲 夏蝶に花摘む指をとがめらる 冷蔵庫独り占めする厨事

龍 天 に

(2000年)     太陽と我との角度に初鴉     六角堂七人が座す春日中     花守となる藩校の留守居役     時の日や失くしたジーンズ膝小僧     物置の影真四角に夏陽射す     三十人の椅子ありピアノある露台     草の花路地縦横に曲る風     山の端の空に溶け出す秋の暮     椅子引いて虚の世に入る良夜かな     雲動く佐渡より神を送る風

搭 乗 口

(2001年) 歳時記の改訂七版鰯雲 待ち合わす下りホームの秋の暮 搭乗口縮んで伸びて冬茜 自我少し重ね布団の身幅ほど エプロンのフリル糊づけ寒厨 風光る婦人公論小脇にす プリクラの交換百回紙風船 お稽古のカバン重たし梅は実に 仰向けの虫が動けば蟻の列 鷺草の朽ちて高さをそのままに 秋の日や周りはすべて飛べるもの 夕顔を咲かせひとりを待っており

手 は 翼

(2001年) 寒風の迷わず男坂上がる 雛飾る指は父似や父在す 春の土つま先何かうれしそう みちのくの蛙災難理科実験 避雷針揺るがず高層ビルの夏 師は遠き道に休まれ迎馬 虫飛んで大捕物となる夕餉 鈴舞の巫女の白足袋秋を踏む 手は翼鳥になりたし風澄めば 一刻のわかれは楽し赤のまま